〈高尾隆のインプロ本・動画紹介〉はじめます!キース・ジョンストンに薦めてもらった本や動画、私が好きなインプロ関連の本や動画をご紹介していきます。暇にしているインプロヴァイザーのみなさんに届きましたらうれしいですー。
ファインマン『ご冗談でしょう、ファインマンさん』
先日、ジョンストンが隔離されたインプロヴァイザーたちに薦めていた本。ノーベル賞受賞物理学者の自伝だが、読みやすく笑える。人の好奇心はどのように働くのかが生き生きと描かれている。
TEDxYYC「Don’t Do Your Best|Keith Johnstone」
キース・ジョンストンのTEDトーク。何度も見る価値あり!最後、時間が来たのに終われず、あとで編集すればいいとか言ってTEDの根幹を揺るがしてる(笑)。何度でもやり直せる彼のインプロ哲学。
ガルウェイ『新インナーゲーム』
テニスのコーチングの本だが、ジョンストンはもっとも優れた演技の教科書だと言う。自分の中で繰り広げられる親のような自分(セルフ1)と子どものような自分(セルフ2)との戦い(インナーゲーム)を分析。
「Keith Johnstone Teaches Trance Masks」
キース・ジョンストンのDVD「TRANCE MASKS」からの抜粋。彼の主著『インプロ』の最終章は「マスクとトランス」。でも、本だけだとイメージがしにくい。本と合わせてぜひー。
キース・ジョンストンのDVDはこちらで買うことができますー。
ホルト『子ども達はどうつまずくか』
How Children Failの翻訳。ホルトはジョンストンが自分のアイドルだという教育学者。学校の恐怖に対して子どもたちが取る戦略がいかに彼らを学びから遠ざけていくかを繊細に描きます。絶版なのが残念。。
How Children Failの改訂版からの翻訳もあります。こちらも絶版。。『教室の戦略―子どもたちはどうして落ちこぼれるか』
チャップリン「サーカス」
隔離されたインプロヴァイザーたちへのジョンストンのアドバイスのひとつは「チャップリンやキートンの映画をもう一回観て!」。アドバンシング/ノットアドバンシング(45秒のシーン)の理解が深まりますー。
「On Keith」。
実はこれからはじまる動画。キース・ジョンストンとそのインプロに影響を受けた世界中のアーティストのインタビュー集です。ジョンストンの伝記を書いたテレーサ・ロビンズ・ダデックさんのプロジェクト。4/10から毎週配信。
デズモンド・モリス「裸のサル」
ジョンストンはインプロがライトエンターテインメントであるなら一生かけてやる価値はないけど、人間探究であるなら一生かけてやる価値があると言います。ジョンストンが薦める人間という動物を知れる本。
デズモンド・モリス「裸のサル」、松岡正剛の千夜千冊でも取りあげられていますー。
夜が長い、こんなときだから、「松岡正剛の千夜千冊」をじっくり読んでほしい!リムスキー=コルサコフの「シェヘラザード」でも聴きながら。
https://1000ya.isis.ne.jp/top/
あと、夜が長い、こんなときだから、渡部淳先生のブログをまとめ読みしたい。渡部先生の遺された言葉をじっくり味わう。
演劇的知の周辺―渡部淳
カレン・プライア『うまくやるための強化の原理』
ジョンストンがワークショップでよくやる「イルカの調教ゲーム」。このゲームをつくったのがイルカの調教師だったプライアです。この本にはグレゴリー・ベイトソンがこのゲームをやった話も。
ローレル&ハーディ「County Hospital」
アメリカの2人組コメディアンの1932年の短編映画。ジョンストンのワークショップで観た。他の無声映画のコメディのように早回しをしていないので、演技がトゥルースフルであることがよくわかる。
ジョンストンはローレル&ハーディの「Blockheads」も観せてくれた。その中の、車椅子の人を抱えて車に乗せるアドバンシング/ノットアドバンシング。車椅子に乗ってんのに歩いてるやん!とツッコみたくなるやつ。
キース・ジョンストン『インプロ』
ジョンストンにはImpro(1979年)とImpro for Storytellers(1999年)の2冊の主著があります。そのうちImproは翻訳が出ています!自伝、ステイタス、スポンタネイティ、ナラティブ、仮面について。必読書!
「ロッド・ハルのエミュー、マイケル・パーキンソンと対面する」
キース・ジョンストンのおすすめ。でも、インプロと関係なく、ただ見て、大笑いしてくださいー。
ヘリゲル「弓と禅」
キース・ジョンストンのおすすめ。ドイツ人哲学者が日本で弓道を学んだ体験を描く。彼の真面目さが読んでて可笑しい。自意識(「インナーテニス」でいうセルフ1)がいかに学習の邪魔をするのかがよくわかる。
ドライヤー「裁かるるジャンヌ」
1928年の無声映画。ジョンストンはジャンヌの目の表現から学んだという。彼女はまったくまばたきをしない。ただ映画中、一瞬信仰心が揺らぐ場面だけまばたきをする。映像を流しておき時々目に入れても学べる。
「裁かるるジャンヌ」のDVD(伴奏音楽、日本語字幕付)もありますー。
沢庵『不動智神妙録』
ジョンストンが教えてくれた。はじめ「ターカワァン」と言ってて、なんだろうと思ったら沢庵だった。ハットゲームの極意。ジョンストンはハットゲームを禅マインドフルネスのゲームだと言う。ビーイングゼアを学ぶ一冊。
「Laughing Matters」
コメディの技法を紹介するドキュメンタリー。「Mr.ビーン」でおなじみのローワン・アトキンソンが自らフィジカルコメディのさまざまな技法を実演してくれる!言葉がわからなくても笑えて勉強になるから、ぜひ観てほしい!
ショトレフ『ザ・オーディション』
ジョンストンがいつもワークショップで言及するこの本。ハリウッドのキャスティング・ディレクターが教える俳優がオーディションを受ける際の心得。舞台に上がる人たちにとって役立つアドバイスがたくさん。
黒澤明「生きる」
ジョンストンは20歳ぐらいのときにこの映画を観て、ドラマとは人が変わることだと学んだという。主演の志村喬はまばたきをしない(帽子の影を演技にうまく活用)。レストランのハッピーバースデーのシーンがただただすごい。
ニコライデス『素描の基礎技法』
The Natural Way to Drawの翻訳。ジョンストンは、この本の中の「早く5000回まちがえれば、早く直し方を学べる」という言葉に触発されて、実際に1年以上かけて5000の顔を描いた(私も見せてもらった)。
宮崎駿「千と千尋の神隠し」
わざわざ薦めなくてもみんな観てますね(笑)。ジョンストンはこの映画を観て、自分の文化にはないストーリーテリングの構造に興味を惹かれて、10回は観たそう。リインコーポレーションが複雑な物語をまとめている。
内藤淳『進化倫理学入門』
インプロ探究のために最近私が強くおすすめしている本が3冊ある。その中の1冊。生物としては弱い人間が生き残ってこられたのは利他性のため。人間は利他的であることに快を感じるようにできている。人間探究の本。
Improv Games「Learn how to move your improv classes and performances to Zoom」
私のインプロの先生、ウィリアム・ホールが教えてくれる、Zoomでインプロのワークショップやパフォーマンスをする際のちょっとしたコツ。ありがたいー。
英語の動画ですが、YouTubeの[設定]で[字幕-英語(自動生成)]を選べば、完璧ではありませんが英語字幕が出てきますし、[自動翻訳-日本語]とすれば、だいたいどんなことを話しているかわかります。ウィリアムははっきりわかりやすく話してくれているので、英語リスニングの勉強としてもぜひ!
國分功一郎『100分de名著スピノザ『エチカ』』
私の最近のインプロおすすめ本3冊のうちの2冊目。スピノザは17世紀のキース・ジョンストンだと思う。制約の中で活動能力を十全に発揮できていることこそ自由。スポンタネイティの理解が深まる。
國分功一郎『100分de名著スピノザ『エチカ』』のテキスト本はこちら。
マドソン『スタンフォード・インプロバイザー』
著者のパトリシアさんとお会いしてもう20年!スタンフォード大学で長く教えてこられました。インプロを日常生活に生かすための本。たくさんの言語に翻訳され、世界中で読まれています。
『スタンフォード・インプロバイザー』の日本語版の序にパトリシアさんが書いているもっと自由に豊かに生きるためのアドバイス。「いいアイデアを求めない」「いまを生きる」「あるがままを受け入れる」「最初の考えを大切にする」「自分を信じる」「失敗を恐れない」「にっこり笑う」
グレイ『遊びが学びに欠かせないわけ』
私の最近のインプロおすすめ本3冊のうちの3冊目。子どもは生まれつき学び、探究する衝動があり、それを自由な遊びの中で実現する。でも、学校教育と大人の心配がその邪魔をする。子どもを信じよう!
グレイ「The decline of play」
グレイのTED。遊びの生物学的、遺伝学的分析。自然淘汰の過程で生物になぜ遊びが生じたのか。遊びで身体的、社会的、感情的スキルの練習をし、リスクや恐怖についても学ぶ。英語→日本語の自動翻訳もできます。
ソーヤー『凡才の集団は孤高の天才に勝る』
Gourp Geniusの翻訳。『学習科学ハンドブック』の編者でもある研究者。実は元ジャズピアニストで、インプロの研究もしている!協働的創造性・イノベーションについて。ビジネスパーソンにもぜひ。
「Naked Improvisers」
これからおこなわれるライブストリーミング。キース・ジョンストンと4人の世界的インプロヴァイザーによる実験的試み!日本時間5/10(日)6:30から、以下の国際シアタースポーツ協会のFacebookイベントページにて。
「Naked Improvisers」視聴。キースは出なかったけど、みなさんがインプロをしている様子を見て楽しかったー。オンラインインプロについて学ぶことも多かったし、自分もオンラインの授業やトークをやっているので、見る人はこういうふうに見てるのかぁと体感できた。ショーンの家の猫が懐かしかった。
インプロショーが目指すところはホームパーティー。
レオナルド&ヨートン『なぜ一流の経営者は即興コメディを学ぶのか?』。
Yes, andの翻訳。世界でもっとも有名なインプログループ「セカンドシティ」のインプロをもちいた企業研修の実際とその考え方。ビジネスとインプロに関心がある方はぜひ!
こちらは慶応丸の内シティキャンパスの保谷範子さんによる『なぜ一流の経営者は即興コメディを学ぶのか?』のブックレポート。すばらしくまとまっていますー。
ロビンソン「学校教育は創造性を殺してしまっている」
ギリスのウォーリック大学で演劇教育を教えたケン・ロビンソン。このTEDは世界中にものすごく大きな影響をあたえました。日本語字幕あります。教育における演劇やダンスの重要性。
ジョンストン『Impro for Storytellers』
英語本ですが紹介させてください。キース・ジョンストンの主著2冊の2冊目。私の20年以上のインプロ探究は常にこの本とともにありました。即興実験学校もこの本の内容を試す場としてはじまりました。
ベルテラ『The Body Has Its Reasons』
日本語訳がないのですが、ジョンストンがおすすめするボディーワークの本。フランスの理学療法士である彼女は「反運動」を提唱します。筋肉を緊張から解放することで、からだがうまく動くようになる。
リム「即興する脳」
外科医によるTED。即興時に脳内で何が起こっているかについての実験的研究。ジャズミュージシャンやフリースタイルラッパーにMRIの中で即興してもらう(!)。前頭葉の大部分の沈静化という非常に興味深い現象がみられる。
柳家小三治『どこからお話ししましょうか』
人間国宝の落語家の自伝。NHKプロフェッショナルで見て、「おもしろくしようと思ったらおもしろくしようとしちゃいけない」「小さく小さく」など、インプロと共通することが多くて驚いた。
NHKプロフェッショナル柳家小三治はこちら。
「Alike」
8分間の言葉なしのショートアニメーション。まずぜひ観てほしい。子どもがいれば子どもと一緒に観てほしい。子どもの創造性と学校教育との関係、その中での芸術の役割など、私が共感するメッセージが詰まっている。
スタニスラフスキー『俳優の仕事』
近代演劇においてもっとも即興を大事にした一人。彼の俳優訓練はエチュードと呼ばれる即興をくりかえす。ジョンストンは演劇学校でその演技法を教えるためにファストフードスタニスラフスキーをつくった。
ローレンツ『ソロモンの指環』
ノーベル医学生理学賞を受賞した動物行動学者の本。むずかしくなく、読みやすく、ほほえましい。ジョンストンはこの本でペッキングオーダーのことを知り、ステータスのペッキングオーダーのゲームをつくった。
ナハマノヴィッチ『フリープレイ』
ヴァイオリニストが即興の瞬間に自分の内側で起こっていることを言葉として丁寧につむぎだした本。東洋思想的、瞑想的、神秘的。歴史的芸術家の即興についても。彼の師であるベイトソンの影響も感じられる。
ナハマノヴィッチは昨年、新著Art of Isを出している(私はまだ読めていない)。ヨーヨー・マもコメントを寄せている。このIsを「生きる」と訳すか、「ある」と訳すか、それとも‥‥。To Be or Not To Be。
「ジェイコブ・バニガンのソロインプロ」
彼のインプロは世界最高峰のひとつだと私は思います。なんとソロのロングフォーム!8年前、はじめてベルリンで観て、衝撃を受けた。このジブリッシュのシーン、とにかく観てほしい!奇跡を感じます。
こちらのバニガンのソロインプロもぜひ!まずひとりでインプロシーンをやって撮影し、その直後、たった今撮影した自分の動画と共演してインプロをします。
ヴァフタンゴフ『演劇の革新』
スタニスラフスキーの弟子だった20世紀前半のロシアの演出家。スポンテイニアスでトゥルースフルであることを大事にした。正当化、テンポ、俳優の秘密など、彼のアイデアをジョンストンは多く取り入れている。
ゴードン『演技エクササイズ306』の第3章では、ヴァフタンゴフの具体的なエクササイズが紹介されている。
「Unknown Chaplin」
チャップリンについてのドキュメンタリー。チャップリン映画のアウトテイク(ボツフィルム)が発見された。それを見ると、チャップリンは設定だけ決めて何百回と即興でシーンをやりながら映画をつくっていることがわかる。
日本語字幕付きDVDもあるのですが(私はこちらを持っているのですが)、今は入手できないようで残念。。
『老子』
ジョンストンが、私にとってはじめての教師だったと言う美術教師スターリングは老子に心酔していました。そのスターリングの教え方を試すことによってはじまったジョンストンのインプロは老子の影響を受けています。引き出す教育。
ジョンストンは著書『インプロ』の中で、『老子』のいくつかを抜粋して紹介しています。以前、「高尾隆のインプロレクチャー&デモンストレーション」でその抜粋部分についてお話をさせてもらいました。
マイケル・チェーホフ『演技者へ!』
アントン・チェーホフの甥で、スタニスラフスキー演出の舞台に立ち、のちにアメリカに渡って多くの俳優を育てた。ジョンストンのワークにインスタントマイケルチェーホフというキャラクターワークがある。
ギャスキル『俳優を動かす言葉』
ロイヤルコートシアターでジョンストンの同僚で、RADAでも教えた演出家。この本は章ごとにシェイクスピア、チェーホフ、ブレヒト、ベケットといった劇作家へのアプローチ方法を紹介する。演劇を学ぶ人にぜひ!
「メリークリスマスミスタービーン」
ジョンストンが「予想の輪」を説明する際に例としてもちいる。クリスマスから連想される「あたりまえ」だけで完璧にストーリーができている。後半のターキーのシーンは「ブレイクザルーティン」の好例。
ダデック『Keith Johnstone: A Critical Biography』
ジョンストンの伝記であり、テレーサ・ロビンズ・ダデックさんの博士論文。ジョンストン曰く「自分も知らない」(笑)ことを膨大な資料から詳細に描く労作。今、大学院ゼミでも読んでいる。
ホルツマン『遊ぶヴィゴツキー』
心理学者ヴィゴツキーの研究者であり、コミュニティのための学習・セラピー活動を実践する活動家でもある筆者。インプロを取り入れた興味深いプロジェクトを数々展開している。こちらも大学院ゼミで講読中。
ホルツマンのTEDはこちら。