リライト

ただいま原稿のリライト作業をしています。いつも指導している卒論で言うならば、草稿を書き終わりもう一度頭から書き直す11月段階の作業です。かんたんな作業ではないですが、草稿を一度書き終わっていると、この作業をつづけていけばいつかはかならず終わるという安心感はあります。

リライト時に気にしているのは、一文一内容になっているか(「が」などの接続詞でつないで二つの内容を一つの文に入れていないか)、一段落一内容になっているか(そのチェックのためにこの段落の内容を一言で言うと何かと考えます)、文から文、段落から段落が論理的につながっているかと言うこと。

逆に言うと、リライト時にこういった文や段落の内容や整合性については細かくチェックするので、草稿を書く時には、あまり細かいことを気にせず、後ろをふりかえらず、勢いで一気に書き上げるようにしています。

またリライトをしながら、章・節・項を分離したり合併したりすることもあります。章・節・項の位置を変える「引っ越し」をすることもあります。章・節・項の包含関係や、論理的つながりを考えながらやります。

私は文章を書くのが苦手なので、感覚的に書いてそれでいい文章になるということはありません。ひとつひとつ考えて書いていくしかありません。なので、文章を書くのはけっこう辛い作業です。(小さい時から苦手だったのに、大人になってそれが仕事になるとは、運命ですね。)

以前、キース・ジョンストンのインプロワークショップで、ジョン・マースデンさんというオーストラリアの有名な作家の方と知り合いになりました。ジョンさんは、以前は、ちょっと書いては、読み直して、書き直しというふうにして小説を書いていたそうです。

しかし、キースのワークショップを受けて、一度書きはじめたらうしろをふりかえらずに最後まで書ききるというやり方をやってみたのだそうです。するとずっと早く書きあがり、できあがったものを見ても、以前と遜色ないものだったそうです。それ以来、彼はそのやり方をつづけているとのことです。

質の高いものをつくろうとすればするほど、苦手なものであればあるほど、自己検閲が強くなります。自由な自分がつくったものを、管理する自分がすぐにチェックしようとします。たくさん書きたいと思うなら、特に草稿を書く時にどれだけ「がんばらない」かがとても重要になってきますね。

がんばらないで書くことは、完璧ではない本当の自分をあらわすこと。がんばって書くことは、本当はありもしない完璧な自分をあらわそうとすること。

(2017/8/24)