高尾隆の吹奏楽曲紹介

〈高尾隆の吹奏楽曲紹介〉はじめます!日本では(特にコンクールでは)あまり聴かれないけれども、私がすばらしいと思う吹奏楽曲をご紹介していきます。休校で部活動が休みになり、暇にしている小中高の吹奏楽部員のみなさんに届きましたらうれしいですー。

グレインジャー「リンカンシャーの花束」

吹奏楽界の宝物。グレインジャーが民謡を録音機で採取し、忠実に起こして、そこから曲をつくった。2楽章は世界でもっとも美しい「殺人の曲」。このフェネルがアメリカ海軍バンドを指揮する動画はすばらしい。

フェネルがアメリカ海軍バンドをリハーサルする動画もおすすめ。私はたくさんのことを学びました。5楽章「メルボルン卿」は必見!

パーシケッティ「ディベルティメント」

20世紀アメリカの作曲家。ジュリアードの教授でもありました。ディベルティメントは6曲からなり、どれもまったくちがう個性を持っています。4楽章はサーカスの象の行進のよう。彼の交響曲第6番は、なんと吹奏楽のための交響曲です!

マッキー「シェルタリングスカイ」

ジョン・マッキーは現在アメリカで一番人気の吹奏楽作曲家。ワインダークシーなど、激しく難しい曲も多いですが、この曲はおだやかで技術的にも難しくありません。最近「スナール」というグレード2.5の曲も出ました。

ジョン・マッキーのウェブサイト「OSTI MUSIC」では、彼が作曲した曲のほとんどすべてを聴くことができ、ほとんどすべてのスコアを閲覧することができます。ぜひ曲を聴きまくり、スコアを読みまくってください!

John Mackey

ヒンデミット「交響曲変ロ調」

昨年イーストマンウィンドアンサンブルを振らせてもらったときにやった曲。対位法の極致。スキャッタデイ先生曰く「もしバッハが20世紀に生まれていたら、こういう音楽を書いただろう。」私のイメージは「悪魔の音楽」。

ウィテカー「オクトーバー」

ノースウェスタン大学指揮・吹奏楽シンポジウムで振らせてもらった曲。ウィテカーは吹奏楽曲、合唱曲で有名なアメリカ現代作曲家。イケメン!曲は美しく聴きやすいけど、各パートが独立して動き、スコアは複雑!彼の作品をもっと日本でも聴きたい!

今だからぜひ見てほしい。作曲家エリック・ウィテカーのバーチャル合唱団についてのTED(日本語訳あり)。動画配信された彼の指揮に合わせ、世界中2000人がひとりずつ歌いYouTubeに投稿。それが合わさって合唱となる!

シェルドン「アズトワイライトフォールズ」

教育用吹奏楽曲で有名な彼。この曲はなんとグレード1!でも、この美しさ。中学校吹奏楽部で指導していたとき、楽器をはじめた1年生にすぐに配り合奏していました。この曲から吹奏楽をはじめられる幸せ。

ちなみにこの曲は初見の練習にも使えます。中学校ならば、1年生は事前に練習して、2,3年生は初見でとか。完全に初見はむずかしければ、楽譜を配って5分間の練習で合奏するとか。アメリカの学校吹奏楽では初見の能力をすごく大事にします。この能力があれば、たくさんの曲に親しむことができます。

ベック「ラ・マドレ・デ・ロス・ガトス」

パソドブレ・スタイルの一曲。グレード2。この易しさで「エルカミーノレアル」風のスペインのノリを楽しめる!私は速めのテンポでやるのが好き。ちなみに曲名はスペイン語で「猫たちのお母さん」の意味。

403 Forbidden

クロード・T・スミス「アンセム」

フェスティバルヴァリエーションズ、華麗なる舞曲、ルイブルジョアなど超絶技巧曲で有名なスミス。でも、彼の真骨頂は教育用楽曲だと思う。この曲もグレード3ながら、アクセントばりばりのスミスっぽさが味わえる!

クロード・T・スミス出版のウェブサイトでは、彼の楽曲がたくさん聴けます!

Welcome - Claude T. Smith Publications
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ティケリ「ブルーシェイズ」

アメリカでもっとも有名な現役吹奏楽作曲家。教育用楽曲もすばらしい。ジャジーなこの曲はティーンが大好き。クラのソロがクール。85歳のH・ロバート・レイノルズ先生がミシガン大学シンフォニーバンドを振ってます!

H・ロバート・レイノルズ先生はコーポロン先生の先生。私もノースウェスタン大学で直接指揮を教わりました。レイノルズ先生に「リンカンシャーの花束」の振り方を習う至福の時でした。もっと自由でも大丈夫。音楽の喜びを身体をとおして表現する。その時に教わったことは今も自分の中に残っています。

ティケリのスコアには充実したプログラムノートとリハーサルノートが載っています。詳細でとても教育的。

Blue Shades by Frank Ticheli

フランク・ティケリの新しいバンド教則本「Making Music Matter」については語りたいことが山ほどあります!今は語り尽くせないので、またの機会にー。

MMM Home Page

シェーンベルク「主題と変奏」

多くの大作曲家が優れた吹奏楽曲・管楽合奏曲(オーケストラ曲のアレンジではなくオリジナル作品)を残している。今年の全日本吹奏楽コンクール課題曲Ⅴがシェーンベルクと関わりがあるのでこの機会にぜひ聴いてほしい!

チェザリーニ「アルピナファンファーレ」

チェザリーニは、アルプスの詩、青い水平線、交響曲1番など、難曲もありますが、実は易しい曲も多く、この曲もグレード3。スイスっぽさ、チェザリーニっぽさを楽しめます。コンサートオープナーにも。

バルメイジス「エンドレスレインボー」

現代吹奏楽の編成は木管楽器・金管楽器・打楽器から木管楽器・金管楽器・打楽器・鍵盤楽器に変わってきたというコーポロン先生の意見。その鍵盤楽器を見事に使いこなす吹奏楽作曲家がバルメイジス。グレード3。

https://www.fjhmusic.com/band/b1564.htm

ウィリアム・シューマン「チェスター」

ジュリアード校長も務めたシューマン。1956年に管弦楽版が作曲され、すぐに作曲者自身により吹奏楽版に編曲。木管群、金管群のコラールのあとに変奏が続く。アメリカでは今でもよく演奏される大事な古典的名曲。

アイヴズ「カントリーバンドマーチ」

アイヴズはアメリカでもっとも大事な作曲家のひとりであり、前衛音楽の旗手。もともと1903年に小編成バンドのためにスケッチされたものがフル吹奏楽に編曲された。ある意味、もっとも難易度の高いマーチ(笑)。

アメリカの田舎のお祭りで下手くそなバンドが音を外しながらあちこちで同時に演奏しているイメージの音楽ジョーク。アメリカのなつかしメロディがちりばめられたおもちゃ箱をひっくり返したようなこの曲は、聴く方は楽しいけど、スコアは超複雑で、見てると発狂しそうになる!演奏者も気の毒!

映像を見ると音楽と指揮が合ってない!(これで楽譜どおり正しい。)マーチなのに時に変拍子も!ドップラー効果、あるいはキーをまちがえて演奏していることを表現しているのか、複調も。最後はサックスがぽろっと飛び出ちゃう。(これも楽譜どおり。)計算されためちゃくちゃ。

複雑なリズムや拍子がパズルのように入り組んでいるマーチという意味では、三善晃の「クロスバイマーチ」も思い出されます。

「カントリーバンドマーチ」のアイデアは、のちに交響曲4番にも取り入れられます!この動画でレナード・スラットキンが解説してくれています。この曲は2楽章で、なんと指揮者が2人になります!スラットキンも語っていますが、こんな曲が「春の祭典」のわずか3年後です!

ちなみにレナード・スラットキンの奥さんが、作曲家でノーステキサス大学で教えていたシンディ・マクティー先生。コーポロン先生はマクティー先生と長年一緒に仕事をし、スラットキンとも交流があるそうです。

アイヴズが残した有名な言葉。「人間なら耳を使えよ!(Use your ears like men!)」頭で聴かず耳で聴け。アイヴズは自分のアイドルだという私のインプロソングの先生、ジャシュア・ラウール・ブロディ先生に教えてもらった。私が日本の子どもたちはチューナーばかり使っているという話をしたときに。

アイヴズについてついつい語りすぎてしまいましたー。

ワーグナー「葬送音楽」

ワーグナーは吹奏楽曲を書いている!吹奏楽でワーグナーと言えば「エルザの大聖堂への行列」だけど、この曲もすばらしく美しい!でも、日本ではあまり演奏されない。(葬送のイメージからかな。)楽譜は易しく、音楽は難しい。

ドゥーリー「マーヴェリックス」

2016年の曲。3年前ノーステキサス大学吹奏楽研究室客員研究員としてアメリカにいた時に4回は聴く機会があった人気曲。吹奏楽でこんなかっこいいことができる!カリフォルニア州ハーフムーンベイのサーフィンが題材。

ちなみにハーフムーンベイにキース・ジョンストンのインプロ合宿で行ったことがありますー。

モーツァルト「グランパルティータ」

モーツァルトも吹奏楽曲を書いている!編成に注目。コントラバスが入っている!コントラバス入りの吹奏楽の編成は伝統的であることがわかります。動画は古楽器による演奏。おもしろいー。

私はコーポロン先生の影響で、ハルモニーなど現代の吹奏楽の編成とはちがう管楽合奏もすべて吹奏楽であるという捉え方をしています。コーポロン先生は吹奏楽の歴史はオーケストラの歴史よりも古く、現代までつながる豊かな伝統があることがほとんど知られていないのが残念だと言います。

山本先生と一緒におこなう東京学芸大学公開講座「吹奏楽を指揮しよう!」では、指揮課題曲としてモーツァルトのセレナード第12番ハ短調も取りあげます。この曲はイーストマン音楽学校吹奏楽指揮マスタークラスでも課題曲だったので、私も勉強しました。

モーツァルト「グランパルティータ」のベルリンフィル奏者による演奏の動画。古楽アプローチの演奏はおもしろいけど少しピッチが低くて、ずっと聴いているとちょっと具合が悪くなってくるけど、こちらは気持ちいいー。

マスランカ「交響曲4番」

3年前に亡くなったアメリカの作曲家。彼のシンフォニーをぜひ聴いてほしい。吹奏楽でこんなにスケールの大きい、精神性の極みのような音楽がつくれるとは。動画はアメリカ海軍バンドで、指揮はマロリー・トンプソン先生。

トンプソン先生には、ノースウェスタン大学指揮・吹奏楽シンポジウムでたくさん指導していただきました。女性吹奏楽指揮者のトップランナー。指揮者としてすばらしいだけでなく、リーダーとしてメンバーひとりひとりへの愛にあふれ、みんなに慕われるすばらしい先生。

マスランカはこんな今だからこそ聴くべき音楽だなぁ。精神的危機を、自然の中で癒やされながら、乗り越えていく。宇宙と自分のつながりを直観する。聴いているとぐっと込みあげきて、涙腺が刺激される。

ドアティ「ヴァルカン」

ノーステキサス大学指揮者コレギウムで3楽章を指揮させてもらいました。独特なアメリカンポップカルチャー的作風を持つグラミー賞受賞作曲家。この曲はスタートレックに触発されている。3楽章の2台のスネアが超かっこいい!

この動画ではドアティ「ヴァルカン」のスコアが見れますー。演奏はコーポロン先生&ノーステキサスウィンドシンフォニー。私が指揮させてもらった数週間後の録音!

この指揮者コレギウムのときにドアティさんが特別講師でいらっしゃって、コーポロン先生&ノーステキサスウィンドシンフォニーと一緒に新曲Winter Dreamのリハーサルをするのを見学させてもらったのも貴重な経験だった。指揮者、演奏者と話しながら、どんどん楽譜を変えていく柔軟さが印象的だった。

ストラヴィンスキー「八重奏曲」

ストラヴィンスキーも吹奏楽曲(管楽合奏曲)をいくつも書いている!この木管と金管が混ざった編成は夢で見たそう!ノースウェスタン大学指揮・吹奏楽シンポジウムの課題曲のひとつで、さすがに回避した(苦笑)。

兵士の物語、管楽器のための交響曲、春の祭典、サーカスポルカ、ピアノ協奏曲、詩編交響曲などなど、ストラヴィンスキーと吹奏楽で語りたいことはいろいろあるけど、また今度ー。

レスピーギ「ハンティングタワー」

レスピーギも一曲だけ吹奏楽曲を書いている!1932年にスーザの追悼演奏会で海兵隊バンドによって初演。ローマ三部作やベルキス、ステンドグラスなどの編曲作品とくらべるとちょっとシブいけど、充実したいい曲ー。

アヴシャロモフ「ヒルダンス」

クラリネットアンサンブル曲を作曲者が吹奏楽編曲。5/8拍子が続くブルガリア民俗舞踊スタイルはエキゾチック。クラリネットの超絶技巧!演奏はノーステキサスウィンドシンフォニー、指揮は私の親友ジャック・イーディ!

スコアはこちらで見られます!

http://fogsparrow.wpengine.com/wp-content/uploads/Hill-Dance-Band-SCORE-ledger-2015-crx_ALL.pdf

アヴシャロモフさんは、遠隔合奏のために乗り越えるべき課題を整理してくれています。

REMOTE REHEARSAL SOLUTION CHALLENGE (long message)

REMOTE REHEARSAL SOLUTION CHALLENGE (long message)

ホルスト「ハマースミス」

ホルストはまず絶対、第一組曲と第二組曲を聴いてほしいけど、この曲もおもしろい。ホルストが住み、教えていたロンドン西部のハマースミス。ロンドンらしい暗い空とテムズ川の流れが見えるよう。フェネルと海兵隊バンドで。

前にハマースミスに行ったときの写真がこちらです。「ハマースミス」の感じとぴったり重なって驚きましたー。

ホルストはハマースミスのセントポール女学校で音楽を教える週末作曲家でした。この周りをうろうろして、写真を撮っている私はかなりあやしい(^-^;)。

ホルストはBBC放送吹奏楽団に新曲を委嘱されたけどなかなかできなくて、「ハマースミス」が完成する前にまずバッハの曲を吹奏楽編曲して渡します。この曲もすてきですー。コーポロン先生とノーステキサスウィンドシンフォニーで。バッハ(ホルスト編曲)「ジーグ風フーガ」

ホルストとウィリアム・モリスは実はつながりが!20歳のホルストはモリスの社会主義者協会に入り、ハマースミスにあるモリスの家でバーナード・ショーの講義を受けたり、合唱団の指揮者になったり。26歳の時の「コッツウォルズ交響曲」2楽章はモリスに捧げられた美しい曲。

ヴォーン・ウィリアムズ「イギリス民謡組曲」

ホルストの大学時代からの親友であり、ホルストとともにイギリスを代表する作曲家。この曲も吹奏楽の宝のひとつ。中学校吹奏楽部でもやってみたかったけど、実現できなかったなぁ。彼の交響曲もおすすめ!

ヴォーン・ウィリアムズ「チューバ協奏曲」もおすすめ!(私はチューバを吹くので。)81歳の時の作品!以前、キース・ジョンストンとおしゃべりしていたときに、「何の楽器をやってたの?」「チューバです」「ヴォーン・ウィリアムズ!」と言われたことがある。

アーノルド「金管五重奏曲第一番」

現代イギリスを代表する作曲家。第六の幸福をもたらす宿、ピータールー、スコティッシュダンス、イングリッシュダンスなど吹奏楽編曲もいいけど、こっちにしました。高校生のときにやりました。おもしろかったなぁ。

メンデルスゾーン「吹奏楽のための序曲」

メンデルスゾーンも吹奏楽曲を書いている!ゆったり美しいアンダンテの前半に、華やかなアレグロ・ヴィヴァーチェの後半。春を思わせる名曲。

メンデルスゾーン「吹奏楽のための序曲」は、15歳(!)の時に作曲した「ノクトゥルノ」が元になっている。11人編成の管楽合奏曲。山本訓久先生の指揮、東京ウインド・シンフォニカの演奏で。

モートン・グールド「交響曲第4番「ウェストポイント」」

サンタフェサガ、ジェリコ狂詩曲といった吹奏楽の名曲を残した20世紀アメリカの作曲家。この曲はアメリカ陸軍士官学校(ウェストポイント)のために書かれた。吹奏楽の重要曲のひとつ。

グノー「小交響曲」

グノーも吹奏楽曲を書いている!ハルモニー編成+フルートの管楽九重奏。フルート奏者タファネルのために書かれ、フルートが大活躍!私も2楽章を指揮させてもらい幸せな時間を過ごしました。3楽章のハンティングホルンもすてき。

ヘスケス「ダンスリーズ(セット2)」

私は子どものころから、カルミナ・ブラーナとか、マーゴリス編のテレプシコーレとか、古い音楽を現代的に味付けした曲が大好きです。この曲もそんなひとつ。ヘスケスは王立音楽大学教授のイギリスの作曲家。

ジルー「交響曲第4番「日本からの栞」」

映画、テレビ、ゲームを含め幅広く活躍する人気女性作曲家。吹奏楽作品も多く、ご紹介に迷うところですが、日本を題材としたこれ。北斎や広重に触発された富士山、日本橋、神奈川、浅草、蒲原、箱根の6楽章。

ノーステキサス大学を先日退職されたデニス・フィッシャー先生がジル―さんと親しくされていて、彼女の曲をたくさん取りあげ、レコーディングもされています。このCDのジャケット、フィッシャー先生がバンジョー弾いてる(笑)。

University of North Texas Symphonic Band & Dennis Fisherの「Giroux: Shine」をApple Musicで
アルバム・2018年・12曲

コリリアーノ「交響曲第3番「サーカス・マキシマス」」

現代最高の作曲家のひとり。ジュリアードでも教え、弟子にマッキー、ウィテカー、ブライアント。吹奏楽曲も数曲。彼の曲はもうレベルがちがう。シモンボリバルユースシンフォニックバンドで。

ベートーヴェン「管楽八重奏曲」

ベートーヴェンの吹奏楽曲!私もイーストマンで1楽章と2楽章を指揮させてもらいました。21歳の時の作品。若々しく親しみやすいけど、簡単ではない。のちにこの曲を作曲者自ら弦楽五重奏曲第一番にアレンジしている。

ハルモニー編成の古典的名曲を、もっともっと吹奏楽部の生徒たちにも演奏してほしい!!!ダブルリードがなかったり、ホルンがむずかったりすれば、フルート、クラリネット、サックス、ユーフォニアム、コントラバスなど他の楽器で代用してもいい。フレックスの楽譜があってもうれしいなぁ。

ヴァイル「小さな三文音楽」

ブレヒト「三文オペラ」の音楽を担当した彼がオペラから抜粋してつくった組曲。2曲目のマック・ザ・ナイフはどこかで耳にしたことがあるはず。3年前に学芸大で演劇の学生と吹奏楽の学生で一緒にやった。楽しかったなぁ。

ラウタヴァーラ「お告げ」

キース・ジョンストンが先日、最近彼の曲を聴いてると教えてくれて、はじめて知ったフィンランドの現代音楽家。調べたら吹奏楽曲もつくっている。この曲はオルガン、金管五重奏と吹奏楽。聴いたことのないすごい音がしてる!

フーサ「アル・フレスコ」

4年前に95歳で没したチェコ出身の大作曲家。吹奏楽曲も数多く残した。重厚なサウンド、パーカッションの重視、苦しくなるほどの緊張感が彼の特色。「プラハのための音楽1968」「この地球を神と崇める」もぜひ聴いてほしい。

ネリベル「トリティコ」

彼もチェコ出身の大作曲家(フーサの2歳年上)。「交響的断章」「2つの交響的断章」が有名。この曲の2楽章は2台のティンパニが活躍。提出できなかった博士論文は「兵士の物語」についてだった。この動画はスコアも見れる。

シュワントナー「ルミノシティ」

吹奏楽界で強烈な個性を放つ彼。7度9度11度と重なるアルペジオ、打楽器を中心とした減衰音と残響の扱いのうまさは、昔ギター奏者だったと聞けばよくわかる。ミニマルミュージック的反復。分析すると構造はシンプル。

コーポロン先生&ローンスターウィンドオーケストラが5年前、このWASBEのためのルミノシティをリハーサルするのをノーステキサス大学で見学させてもらったことがある。すごい早さでざくざくとリハーサルを進めていき、2時間で1楽章3楽章を仕上げ、プロってすごい!と思った記憶がある。

フォシェ「交響曲変ロ長調」

20世紀前半のフランスの作曲家。この曲は1926年作曲の古典的名曲。洗練されたシンプルさ。華やかさと格調高さ。この曲を聴いていると、その和声と歌の美しさに心動かされて、泣きそうになるときがある。

ロバート・W・スミス「アポロ・ファンファーレ」

アメリカの作曲家・指導者ですばらしい教育用作品をたくさん書いている。この曲はグレード0.5!だいたいどの楽器もドからラまで吹ければできる。でもこの音楽のクオリティ。

ロバート・W・スミスの曲は彼のウェブサイトからチェックできます。グレード0.5や1の初心者用の曲もたくさんありますし、グレード5や6の曲もあります。

Publications
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ロバート・W・スミスが吹奏楽講習会をすると、終わりに握手を求める指導者の列ができて、みんな「あなたの曲で私の吹奏楽人生ははじまりました」「あなたのおかげで私は吹奏楽を好きになり、そして今こうなりました」と言うのだそう。すばらしい職業。すばらしい人生。

私は中学校吹奏楽部でロバート・W・スミス編曲の「Be Still, My Soul」を使いました。フィンランディアの美しいメロディー。5月の保護者会の日に音楽室でやるミニコンサートで1年生だけで演奏すると親御さんが涙します。グレード0.5の曲集「Our First Band Concert」の中に。

Just a moment...

ハートリー「23の管楽器のための協奏曲」

イーストマンウィンドアンサンブルのための1957年の曲。各パート1人ずつのウィンドアンサンブルスタイル(あるいは大きな室内楽)。パレットの23の絵の具を混ぜ合わせて、さまざまな色をつくり出すイメージ。

ジューシーな和音、めくるめく展開のあと、最後にあのメジャーコードを出してこられたら、はっと心をつかまれてしまいますよね。新古典主義的ですね。トロンボーンアンサンブルは、ひょっとしてカンツォーナですか?

トッホ「シュピール」

オーストリア出身の作曲家。ドナウエッシンゲン室内楽祭の1926年の吹奏楽特集(吹奏楽史におけるとても重要な出来事)のためにヒンデミットに誘われて作曲。サーカス音楽のような遊び心にあふれた一曲。

以前、ノーステキサスウィンドシンフォニーのヘルプで「シュピール」のバスドラムを担当する栄誉にあずかったことがあります。バスドラムのドン!がむっちゃ目立つこの曲。リハーサルで休み小節を数えまちがえてドン!を外してしまい、他のプレイヤーににらまれた酸っぱい思い出があります。

ベルリオーズ「葬送と勝利の大交響曲」

ベルリオーズも吹奏楽曲を書いている!革命記念式典での野外演奏のために作曲。スコアの指定で演奏者100人以上!(のちに弦と合唱をオプション追加。)初演はベルリオーズ指揮で演奏行進。このスケールと迫力!

弦が入っているけど、このベルリンフィル&ラトルの「葬送と勝利の大交響曲」は映像も含めて超かっこいい!

またベルリンフィルの「葬送と勝利の大交響曲」を聴いてしまった。うるっとくる。デジタルコンサートホールの無料開放、本当にありがたい。

フェラン「フェアリー・テイル」

おなじみのスペインの作曲家ですが、難曲・大曲だけでなく、パソドブレの数々もいかにもスペインですてきだし、この曲のような教育用作品もすばらしい。ハーモニーにどっぷり浸り、合奏の喜びを感じられる。

フェレール・フェランは、チャーリー・チャップリン、ガリレオ・ガリレイらとともに、タカシ・タカオが親近感をおぼえる名前です。

スパーク「パスファインダーマーチ」

吹奏楽、ブラスバンド界で超有名なイギリスの作曲家。実は教育用作品もすばらしい。こちらはグレード1のマーチ。かんたんなマーチは本当にありがたい。こちらのサイトで試聴とスコア閲覧ができます。

https://www.rundel.de/en/pathfinders_march/a-159/4922#

あとこちらは教材ですが、2年前に出たスパーク「30のオリジナルコラールとウォーミングアップ」。スパーク作曲のせつなく美しいコラールの数々。初見練習にも使えそうですー。

もしユーフォニアムをやっていて、まだ聴いたことがないなら、ぜひ聴いてほしいのがスパーク「ソング・フォア・アイナ」。そしてぜひチャレンジしてほしい。トロンボーン、テナーサックスの人や、他の楽器の人も。私はチューバで練習して美メロに酔うのが至福の時間です。

メシアン「異国の鳥たち」

メシアンの吹奏楽曲!鳥に魅せられた作曲家。複雑な楽譜も、鳥の鳴き声を正確に写し取ろうとした結果だとわかると、すっと理解できる。抜粋ですが、内田光子、ラトル、ベルリンフィルで。

メシアンの鳥の鳴き声の採譜の様子。(ちょっと笑える。)

マクティ「ノートツァルト」

ノーステキサス大学で長く教えてこられたマクティ先生。パートナーはレナード・スラットキン。ブラスバンド曲を作曲者自ら吹奏楽編曲。現代的な響きの中にアイネクライネナハトムジークが顔を出す、チャーミングな曲。

シュミット「セラムリク」

「ディオニソスの祭り」で超有名なフローラン・シュミット。こんな吹奏楽曲もあります。オスマントルコ訪問中に見たパレードに触発されて作曲。トルコが吹奏楽(あるいはクラシック音楽全体)にあたえた影響はとても大きい。

バーンズ「交響的葬送曲(交響曲第7番)」

ノーステキサスシンフォニックバンドで私が「科戸の鵲巣」を振らせてもらったコンサートのメインはこれでした。南北戦争が題材。フィッシャー先生は舞台後ろの壁に南北戦争の写真を映写しつつ演奏しました。

クリフトン・ウィリアムズ「シンフォニックダンス第5番「ニュージェネレーション」」

マイアミ大学でアルフレッド・リードと同僚。この曲は作曲者は「交響音楽とビッグバンドジャズの結婚」と言う。いやはや簡単な曲ではないけど、ジャジーでクール!

ダール「シンフォニエッタ」

シェーンベルク、ストラヴィンスキーとも交流があった作曲家の1961年の名曲。新古典的で構造を強く感じる。ノーステキサスウィンドシンフォニーのリハーサルをずっと見学してたけど、こういう曲は本当にむずかしい!

スタンプ「パスタイム」

現代アメリカの吹奏楽指揮者・作曲家による野球に捧げられた一曲。「私を野球に連れてって」のメロディーが展開する。小節番号が伝説的野球選手の背番号と対応していて、その小節にその選手にちなんだ動機が隠されている!

ゴセック「古典序曲」

17~18世紀にフランスで活躍した指揮者・作曲家。ガボットで有名。パリ音楽院の設立にも関わる。吹奏楽編成の拡大は彼の影響。1794年のこの曲は冒頭のCメジャーコードから引き込まれる上品で美しい音楽。吹奏楽史に欠かせない。

カテル「序曲ハ調」

ゴセックを紹介したのでカテルも。ゴセックを師とし、同時代に活躍。パリ音楽院でも教えた。1792年のこの曲はモーツァルトの影響を感じられる端正な序曲。フランス革命期は現代吹奏楽のはじまりとして吹奏楽史でとても大事な時期。

オーリオ「エアロスペース」

現代フランスの才能あふれる若き作曲家。実はノーステキサス大学指揮者コレギウムで一緒になり友達になって、パリでもカフェでお会いした。彼の音楽はドラマティックでありながら繊細。吹奏楽は風の音楽だなと感じさせる。

CD「エアロスペース:マキシム・オーリオ作品集」を演奏しているのがパリ警視庁音楽隊。ゴセックやカテルがつくったフランス吹奏楽の伝統が、今、ここまでたどり着いています。

エアロスペース:マキシム・オーリオ作品集
エアロスペース:マキシム・オーリオ作品集 パリ警視庁音楽隊 吹奏楽 CD De Haske Records 4-023-3

動画ではオーリオの作品がたくさん紹介されている。「エアロスペース」は30分過ぎから。

彼にどうやって作曲しているか聞いたら、まず、手書きで楽譜を書いているそう!そして楽器も使わないそう!夜中、無音の中で、大きな五線紙に鉛筆でカリカリ書いているとのこと。動画ではその手書きの楽譜も見れる。

コジェヴニコフ「交響曲第3番「スラヴャンスカヤ」」

20世紀ソ連の作曲家。多くの吹奏楽曲をつくるも、西側諸国にほとんど知られなかった。勇壮なテーマと泣きのテーマがからまる1958年のこの曲。2楽章3楽章はチャイコフスキーのバレエ音楽みたい。

ミャスコフスキー「交響曲第19番」

ソ連の吹奏楽曲をもうひとつ。20世紀前半に活躍した作曲家。プロコフィエフと友達。1939年のこの曲は彼の27曲の交響曲のうち、唯一の吹奏楽の交響曲。勇壮さと郷愁が同居する。スヴェトラーノフ&USSRの大迫力で!

吹奏楽からは離れますが、もしスヴェトラーノフ&USSRを未体験ならば、「ローマの祭り」「ローマの松」「序曲1812年」などの名爆演をぜひ!主顕祭、サルタレロのうしろに戦車が見える。。アッピア街道、最後そんなに伸ばしたらプレイヤーが死んでしまう。。「スヴェトラーノフ 爆演」で検索(笑)。

バード「セレナーデ」

19世紀後半からドイツで活躍したアメリカ人作曲家。リストにも学ぶ。1898年のこの曲は古典的なハルモニー編成。おだやかな癒しの音楽。7年前ジュリアードではじめてコーポロン先生にお会いした指揮法講座の課題曲がこれでした。

コープランド「エンブレムズ」

アメリカを代表する作曲家。吹奏楽では、ロデオ、アパラチアの春、エルサロンメヒコなどの編曲が有名ですが、オリジナル作品もすばらしい。コーポロン先生曰く、2音聴けば、あ、コープランドだとわかる際だった個性。

ドヴォルザーク「管楽セレナード」

管楽器10人+チェロ、コントラバスというモーツァルトのグランパルティータを彷彿とさせる編成。陰りのあるジューシーな音。最後は印象的なリインコーポレイション。高校生、大学生にもぜひ取り組んでほしいなぁ。

私はベルリンフィルデジタルコンサートホールで、ラトル指揮のものを聴き直しました。すてきですー。こちらは無料短縮版。

ダニュー「マグノリアスター」

鉄道ファンのための一曲。マグノリアスターはニューオリンズとシカゴを結んだ列車の名前。シカゴはブルースの街。ブルーススケールと鉄道の疾走感と効果音がかっこいい。作曲者は1983年生まれで、イーストマンで学んだ。

私は以前、ノースウェスタン大学指揮・吹奏楽シンポジウムでこの曲のパーカッションのお手伝いをしたことがある。1212123,2212123,3212123‥‥と7拍子をカウントしながら待つのがたいへんだった楽しい思い出。

ジェイコブ「新しい瓶の中の古いワイン」

曲名がかっこよくないですか!?20世紀イギリスの作曲家の彼は、現代音楽には目もくれず、古典派以前の音楽をひたすら探究した。1978年のこの曲は、古いイギリス民謡を現代的に味付け。だからこの曲名!

彼の各楽器の特性の生かし方はすばらしく、協奏曲もたくさん残している。彼の著書『管弦楽技法』は翻訳も出ている(著者名はゴードン・ヤコブとなっている)。

管弦楽技法 - 音楽之友社
管弦楽一般の原理はもとより、個々の楽器の性能、特質からその編成に至るまで具体的に詳述。管弦楽曲の作曲に、研究に、鑑賞に、必備の書。

番外編「レオP」

木管低音を愛するみなさん、ぜひ聴いて!むっちゃかっこいいから!もし気に入ったら、YouTubeで「Leo P」で検索して、レオPとグレイス・ケリーのコラボをどんどん聴いて!(実はレオPのこと教えてくれたのはコーポロン先生。)

コルグラス「ナグアルの風」

昨年亡くなったカナダ人作曲家。スピリチュアルで劇的な音楽。この曲はカルロス・カスタネダの呪術体験の本に触発された音楽による物語。コーポロン先生がタカシは演劇人だからコルグラスに興味を持つかもと教えてくれた。

ブライアント「ウィンドアンサンブルのための協奏曲」

アメリカの人気吹奏楽作曲家。マクティ、コリリアーノに学ぶ。この曲は舞台上の演奏者の他に客席の左右後に3つのバンダを置き観客を包む音響効果をねらう。3楽章にはジャズ要素も。グレード7。

ガーシュウィン「ラプソディインブルー」

この曲はまずグロフェによってホワイトマンバンドというジャズバンドのために編曲された。ヴァイオリンとバンジョーが入っているので吹奏楽じゃないけどあとは全部管打楽器!(オケ編曲はその2年後。)

コーポロン先生&ノーステキサスウィンドシンフォニーの演奏がすばらしい!このグロフェのオリジナル編曲でこの質の録音を残す貴重な仕事。

ヴァイオリンなし、バンジョーとウッドベースありのジャンキン&テキサス大学ウィンドアンサンブルの演奏も楽しいー。

以前、ケビンと中学校吹奏楽部でラプソディインブルーをやったときには、ハンスバーガー先生編曲の楽譜を使いました。これが一番よく使われる吹奏楽編曲の楽譜かもしれませんね。

グランサム「キルカ1600」

アメリカで重要な現役吹奏楽作曲家のひとり。幅広い作品があるが、ルネサンス音楽好きな私はこの曲を。1600年前後のコラールを素材に作曲。マーゴリス「テレプシコーレ」やヘスケス「ダンサリーズ」が好きな人はきっと好き!

ルネサンス音楽で好きなのはコンソートというシステム。同族・同種の高音から低音の楽器群がアンサンブル的に演奏し、それがリレーされる。パレットからさまざまな色が飛び出るよう。楽譜はシンプルで音楽は多彩。コーポロン先生はMIDIで聴いてどうかなと思ったけど、初回合奏でこれは!と思ったそう。