即興哲学第91回 Keithの家

以前、私はカルガリーのKeithの家におじゃましたことがあります。国際シアタースポーツ協会(International Theatresports Institute, ITI)に行きたいと言ったら、Keithが車で連れてきてくれたのは彼の家でした(彼の家の一部屋がITIのオフィスなのです)。

彼の家はカルガリーの平均からすると割とこじんまりとしていました。しかし、アートに囲まれた家です!壁にはマティスなどの巨大な絵のレプリカがいくつも貼ってあります。また、寝室には、Keith自身がシャワーカーテンに描いた大きな絵が貼ってありました(100円ショップみたいなところでシャワーカーテンが買えるそうで、キャンバスにもってこいとのことです)。彼が脚本を書いたりするパソコンのすぐ横には電子ピアノが置いてあります。つかれると横を向きピアノを弾いているそうです。

台所でお茶をいただいていると、Keithが奥から一枚の写真を出してきてくれました。たくさんの風船に埋もれて横たわっている細身の若い男性。しばらくして、それがKeithであることに気がつきました。今の私とほぼ同じ年の時の彼。Royal Court Theatreでインプロを教え始めることになった頃の彼。その写真を見ていると、一人の若者が悩み試行錯誤しながらつくってきたもの、それがインプロなんだと、ハッとしました。自分とインプロの距離、自分とKeithの距離が近づいたように感じた一瞬でした。

(2006/6/1)