1から10で聞く

中学校吹奏楽部、夏休みに入ってからの一日一日の生徒たちの伸びがすごい。

夏は人を成長させる。

今日から新しい練習を開始する。楽器で出せる最小の音を1、最大の音を10として、この部分はいくつで吹きたいのかを生徒ひとりひとりに聞いて答えてもらう。指揮者が生徒に強く吹け、弱く吹けというのでなく、生徒が強く吹きたいか、弱く吹きたいかを考えて決める。

fでも伴奏で音数が多ければ4もありうるし、pでも一年生をサポートする必要があれば三年生が5で吹くときもある。低い音か高い音か。他に一緒に吹いている楽器は何か。音楽の流れとしてここは出た方がいいか、抑えた方がいいか。考慮すべきポイントがいっぱいで、判断はけっこうむずかしい。

そして選ぶ数字から、その演奏者がその音楽をどう理解しているのか本当によくわかる。そして私は生徒たちが選ぶ数字がとてもおもしろくて、そこからたくさんのことを学ぶ。

そして私は生徒たちが選んだ数字で吹けるよう棒でサポートする。そのためには、6と7の違いを棒で表現できないといけない。これはかなりむずかしい。

たとえばベートーヴェンの運命の冒頭の「ンジャジャジャジャーン」を8で行くのか10で行くのか。どっちもまちがいではないけど、どっちを選ぶかでつくる音楽が大きく変わる。音楽づくりの後半はこういう決断の連続。それが醍醐味だし、とてもおもしろい!

ここまででまだ音量だけだけど、さらに音を長くするか短くするか、アタックをはっきりするかやわらかくするか、前の音とつなげるか切るか、早めに出るか遅めに出るか、音色を明るくするか暗くするか……。判断することは本当にたくさん。それによって音楽は無限に違ってくるわけだから、本当に奥深い。

こういうやり方は表面的で味気ない音楽のつくり方に見えるかもしれない。でも、それを「なぜそうするのか」ということとつなげて考えたり、話し合ったりするならば、ピッチと縦を合わせたあとは「もっと集中して」「もっと心をこめて」に終始してしまう吹奏楽指導法を乗り越えられるのではと夢想する。

(2016/8/3)