即興哲学第12回 ローステータス・トリック・プレゼンテーション(Low-status Trick Presentation)

前回のワークショップで、ローステータス・トリック・プレゼンテーションというKeithのつくったエクササイズをやりました。舞台に一人で上がり、お客さんの前で一発芸を見せるというもの。ポイントは、芸の内容はどうでもよくて、芸をやる前後が大事だということ。最初は、芸の前後だけの練習をします。

やる気満々で、小走りで舞台に登場。すごいことにチャレンジできる喜びが顔に溢れている。お客さんを見回して、礼。そして、すごいことをやる前らしく、袖をまくったり、準備運動したり、深呼吸したり。ドラムロールが鳴り、一言。「トリック!」。その後、安堵して、笑顔になり、喜びのジェスチャー。

この形ができるようになったら、あとは「トリック!」と言うところで、何かをやります。やることは何でも大丈夫です。何をやっても盛り上がります。この前のワークショップで出たのは、体で大の字、逆立ち、アイ~ンなど。

これをやってみて、私は「なぜ人は笑うのか?」ということについて考えました。人はネタの面白さだけでは笑わない。人が良くて(Good Nature)、前向きで、やる気はいっぱいだけど、腰が低くて威張っていない(Low Status)、そういう人が何かにチャレンジする。そうすると、お客さんは、その人を応援したくなる。その人と一緒になって、成功するのか失敗するのかドキドキする。そして、チャレンジ後の、その人の安心した笑顔を見て、緊張が解けて笑う。うれしい気持ちになる。

リスクに飛び込んでチャレンジする人を観たい!成功したら素直に喜びをいっぱいに表し、失敗してもめげずにポジティブな人を観たい!いいシーンも観たいし、いいストーリーも観たいけど、それよりも何よりもいい人間を観たい!そんなふうにお客さんは思っているんじゃないかなぁと思います。

(2002/4/10)