即興哲学第8回 逆の教え方(paradoxical teaching)

キースのインプロの教え方の特徴の1つに、逆の教え方があります。例えば、ストーリーをつくっていく上で大事なこととして、相手の言うことを受け容れる(accept)ということがあります。これを教えるのに、まず最初に、相手の言うことを受け容れずにつぶす(blocking)ことを徹底的にやるのです。そうすると、シーンの中で相手の言うことを受け容れられるようになります。

この教え方がなぜ有効かというと、無意識的にやってしまっていることを意識化することができるからです。意識化できると、シーンの中でやってはいけないことをやってしまっても、そのことを客観的に捉えることができて、自然に直していくことができるようになるというわけです。

この、逆の教え方の効果は、私が教えるときにも、本当に実感します。大きな声が出ない生徒に、「もっと声を出して」と言っても、余計に萎縮して声が出ない。逆に徹底的にひそひそ声でやってみたりすると、そこから何かが変わったりする。何よりも、やってはいけないと言われることをやれといわれて、気が済むまで思い切ってやるのは楽しい!

この逆の教え方は、演劇を教えることに限らず、教育一般についても応用できるところがあるんじゃないかなと思っています。

(2002/2/20)