即興哲学第5回 キース・ジョンストンからの言葉

即興演劇での、私にとっての大先生は、キース・ジョンストン(Keith Johnstone)です。彼はシアタースポーツをつくるなど、即興演劇の新しい世界を切り開いた人で、即興演劇の世界では、ヴァイオラ・スポーリン(Viola Spolin)と共にカリスマになっていて、その著作「Impro」、「Impro for Storytellers」は、バイブルとして読まれています。

では、そのキースは、実際どういう人なのか?年齢は60代後半、白髪で眼鏡をかけていて、体は横にも縦にも大きい。熊のような感じです。いつも必ず上下とも黒い服を着ています。昨年2000年の夏は、体調が悪そうで、すごく疲れていたのですが、2001年の夏は体調がとてもよさそうでした。人の名前を覚えないことで有名な人なのですが、その年は元気だったせいか、Takashiという名前を覚えてくれるほどでした(彼の大好きな日本人俳優「志村喬」と名前が一緒ということもあるのですが)。

キースに会ったときには、いつも大事な言葉をもらっています(しかも、私が難しい英語を理解できないのをわかって、やさしい言葉で)。1998年の冬に、はじめて日本であったときには、「目をもっと開いて」と言われ、それからずっと目のことは舞台上で第一に気にしています。2000年の夏には「Be Average(がんばらない)」という言葉をもらって、それ以来がんばらないで、ぼちぼちやるようにしています。

昨年2001年は、別れ際に次のような言葉をくれました。「It’s long fight. Never stop fight.(これは長い闘い。絶対に闘うのをやめてはいけない。)」そして、「Seven Samurais(七人の侍)を知っているか?」と聞かれ、「あのラストシーンのように生き残らなければならない。」と言ってくれました。私が、即興演劇を使って、日本の教育を変えようと思っていることを知って、こういうことを言ってくれたのだと思います。キース自身もいろいろ批判されながらも、自分の考えを貫いてここまでやってきた人なので、すごく説得力のある言葉でした。即興実験学校も、「It’s long fight. Never stop fight!」

(2002/1/9)