即興哲学第100回 私の夢~どみんご編

自分のインプロのグループを持つこと。海外でインプロを学ぶこと。投稿した論文が審査に通ること。すごい人と一緒に仕事をすること。大学でインプロを教えること。博士になること。大学の教員になること。本を書いて出版すること。インプロを教えにいろいろな土地に行くこと。英語でコミュニケーションすること。インプロの公演をすること。芸術に関わる仕事で食べていくこと。などなど。

これらは私が20代の時に持っていた夢です。そしてその夢の大半は叶いました。まだ残っている夢の多くも叶う目処がついてきました。そんなふうに人生を送れる人はほとんどいないと思います。夢を実現させてくれたのは多くの人達との出会いでした。本当に本当に感謝しています。

先日、ソートン・ワイルダー作の演劇『わが街』の国立市バージョンを観ました。『わが街』のラスト、亡くなった主人公は、生きていた頃の自分を見るためにあの世からこの世に少しの間だけ戻ることを許されます。特に何もなかった一日を見て、そして気付きます。何でもない一日が、いかに懐かしく、いかに輝いて見えるかということを。私もそう思って何てことのない一日を振り返ると、まだ生きているにもかかわらず、すごく懐かしく輝いて見えます。腰の痛さも、松屋の牛丼の味も、授業のプリントを取りに来た学生とのやりとりも、キャンパス内の銀杏の絨毯も、夜大学に残ってやっている論文書きも。なんと幸せなことかと思います。

多くの夢が叶った今、人生において一区切りの時です。これからどうしていこうかなと考えます。まだまだ欲求も夢もあります。でも、これからの欲求や夢はたとえ叶わなくても不幸ではないと思います。ただ毎日やりたいことがあって、やらなければいけないこともあって、ご飯を食べて、人と会って、本を読んで、何か書いて、夜はお酒を飲んで、少し考えて、ストレッチして、寝て。そうやって生きている今、それこそが夢なんじゃないか。そんなことを思います。

あらためて言うのも何ですが、みなさんどうもありがとう。今まで生きてきてあまりに多くのものをもらってきたので、これからは少しずつでもお返しできるように、でもがんばらないで生きていきます。これからもどうぞよろしくお願いします。

(2007/12/19)